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   イルカ先生の口寄せ獣(3)

むかしむかし、木の葉の里にプロフェッサーと呼ばれた忍がおりました。
名前は猿飛ヒルゼン。歴代最強の火影として世界中にその名を轟かせた木の葉の英雄です。

けれども、ほんとうのヒルゼン様は、お茶目で悪戯好きな、ちょっと困ったおじいちゃんでした。
今日も若い女の子をナンパしているところを奥さんに見つかってしまい、里中を追いかけまわされているのです。
捕まれば、みんなの前で百叩きの刑に処されるのです。
なんとしてもそれだけは避けたいヒルゼン様は、奥さんの目を盗んでなんと狸に化け、アカデミーの裏山に隠れました。

ヒルゼン様は、とぼとぼと山の中を歩いていました。
奥さんは怒るととっても怖いのです。
だけど、ヒルゼン様は奥さんのことが、大好きで大好きで仕方がないのです。
今日だって、ちょっと奥さんを嫉妬させてみようと思っただけなのに、加減を間違えて、本気で怒らせてしまったのです。

―― 百叩きの刑は、いやじゃのぅ。ここはひとつイルカに仲裁でもしてもらうかのぅ。

猿飛家のみんなはイルカのことが大好きなのです。
イルカがとりなしてくれれば、きっと上手くいくに違いありません。
いいことを思いついたとばかりに、ヒルゼン様がアカデミーに向けて勢いよく駆け出すと、ガシャン! とイヤな金属音がして、後ろ足に激痛が走りました。

―― しもうた!

なんということでしょう。
ヒルゼン様ともあろう者が、害獣駆除の罠にかかってしまったのです。
これでは一度人間に戻って、罠を外さなければいけません。

そのとき、イルカの声が聞こえてきました。

「おい! そこの狸! 大丈夫かっ」
「きゅるるるる〜」

ヒルゼンは精一杯鳴き、イルカを呼びました。

こうしてヒルゼンはイルカに助けられたのです。
イルカが自分を口寄せ獣にしたいと言い出したときには驚いたものです。
火影である自分が、イルカの口寄せ獣になるなんて、とんでもないことです。

だけど、イルカの話を聞いているうちに、ヒルゼン様の心が変わりました。
イルカは野良狸にも優しくできる子です。
こんなに優しい子は普通の子よりも沢山の傷を抱えることになるのです。
そして、健気なイルカはヒルゼン様にも遠慮して、心の痛みに独りで戦いを挑むのでしょう。
いままでそうだったように、これから先もずっとそうしていくのでしょう。

ヒルゼン様の心がジクジクと痛み始めました。

――もし、儂が火影でなかったら、イルカは辛いときには儂を頼ってくれたじゃろうか。

答えの出ないこの問いに、ヒルゼン様はずっと前から苦しんでいたのでした。

ヒルゼン様の心が決まりました。
忍狸として、イルカの心に添ってやりたいと、心の底から思ってしまったのです。

こうして、ヒルゼン様は<たぬ>という名を貰い、イルカに仕えることになりました。
<たぬ>は長い間イルカの心を癒し、イルカのよき友であり続けました。

だけど。

ああ。
空が真っ赤に燃えています。
木の葉の里が、崩れ。燃え。
沢山の同胞が傷ついて。

里に仇名す愛弟子、大蛇丸を前に、ヒルゼン様は死を覚悟しました。
唯一の心残りは、我が子のように慈しんだイルカのことでした。
自分も<たぬ>もいなくなったら、この先誰がイルカの心を守るのだろう。

――すまんの、イルカ。それでも儂は火影として、やらねばならん。
お前に心から愛し合える伴侶が見つかるよう、あの世から祈っておるからの。
イルカよ、今は辛くとも、いつか必ず幸せになれ。


こうして三代目火影、猿飛ヒルゼンは、自らの命と引き換えに屍鬼封尽の印を結んだのでした。






アポ様からのリクエスト内容は、「イルカ先生の口寄せ動物についてのお話。昔裏山で助けたタヌキとかでも、贔屓が過ぎて、お彼岸とお盆の時期だけ三代目を口寄せできちゃうとかでもよいので、なにかしら、イルカ先生にも素敵な獣を!」でした。
アポ様リクエストありがとうございました。


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