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   カカシにいちゃんが心配です

ここ最近のカカシにいちゃんは、何か変だ。

何が変って、俺のことをジッと見つめているくせに、俺が話しかけても気付かなかったり。
俺とプロレスごっこしてても、急にすっごい苦しそうな顔になって便所に駆け込んで長いこと出てこないし。
しかも便所ん中からハァハァって苦しそうな息が聞こえてくるから心配になって声をかけたら「何でもない」って怒鳴られた。

それに、最近お風呂も別々になった。
ちょっと前までは一緒に御飯食べて、一緒に風呂入って洗いっこして、一緒の布団で寝てたのにさ。

昨夜なんて、家に帰ったら丁度カカシにいちゃんが風呂に入ってたから、久しぶりに一緒に入ろうと思って脱衣所のドアを開けた途端「バカ!来るな!」って叫ばれたしな。 

バカってなんだよ。一緒に風呂に入ろうとしただけじゃんかよ。

仕方ないから先にベッドに入ってカカシにいちゃんを待ってたのに、いつまで待っても来ない。
風呂で溺れてるんじゃないかって心配になって見に行ったら、居間で寝袋に包まってるカカシにいちゃんを発見して、俺は結構凹んだ。

父ちゃんと母ちゃんが死んで独りになった俺を、仲良しだったカカシにいちゃんが引き取ってくれた。
それからずっと二人で暮らしてる。兄ちゃんは俺にとってたった1人の大事な家族だ。
大事な家族が変になっちゃうのは困る。早く元に戻って欲しい。
それで、俺は前みたいに、一緒にプロレスごっこしたり、一緒に風呂に入ったり、絵本を読んでもらいながら一緒のお布団で寝たいんだ。

だから俺は思い切ってカカシにいちゃんに聞いてみることにした。

「最近なんか変だけど悩みごととかあるのか?」
「あー……。イルカ、お前がそれ聞いちゃう?」

なにソレ。
ちょっとむかっときた。

「聞いちゃいけないか? 俺がカカシにいちゃんのこと心配したら悪いのかよ!?」
「いや。悪くない。うーん。じゃぁ相談にのってもらおうかな」
「まかせとけ!」

ちょっと嬉しい。俺がカカシにいちゃんの力になれるなんて。

「イルカが言ったようにさ、俺今真剣に悩んでることがあるんだ。食べたくて食べたくて仕方ないモノがあるんだけど、どう考えてみたって食べるにはまだ早すぎるんだ。我慢出来ずに手を出したら全部無くしてしまうかもしれないし。どうしよっか」

なんだ。悩みって食べ物のことかよ。心配して損した。
でも、カカシにいちゃんは真剣に悩んでいるんだから、俺だって真剣に答えなきゃ。

食べたくて仕方ないけど、食べるには早いから、我慢。

うーん。俺も昔、そういう経験したことある。
母ちゃんが育ててた香草。
歯牙んだときの爽やかな香りが気に入って、庭に出るたび葉っぱをちぎって食べてたっけ。
“葉っぱが少なすぎると育たなくなるから、もう少し葉っぱが増えるまで食べるのを控えて”って母ちゃん言ってた。
けど俺は止められなくて、結局葉っぱを全部食べちゃって、香草はダメになった。

母ちゃんの言ったことは正しかったと思う。
カカシにいちゃんに教えてあげよう。

「そういう場合は、食べごろになるまで、チョットづつ何度もつまみ食いすればいいんだよ」

そう言うと、カカシにいちゃんは何故かとても驚いた顔をして俺を見た。
その後すぐに、とっても悪い顔になった。
見たこともない、ワルくてコワイ顔。

「カカシにいちゃん?」
「イルカ!」

兄ちゃんの目がギラリと光って、次の瞬間には、俺は畳の上に仰向けに転がされていた。

「え? えっつ? 何!?」

訳が分からなくてパニックになってる俺の耳が、今まで聞いたことのないくらいネットリとしたカカシにいちゃんの声を拾った。

「そっか。チョットづつなら食べていいんだ」



カカシver.が地雷部屋にあります
(2016.05)


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