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   仮眠をとりましょう 

急ぎの仕事に追われ、連日の徹夜続き。
膨大な仕事の終わりが見えたころ、先に根をあげたのはイルカ先生だった。

「カカシさ……ん。すみません。少し眠らせてください」
「わかりました。もうすぐで終わるので俺もそっちにいきます」
「ふぁい……」

可愛らしい欠伸をひとつ残して、火影室に隣接する仮眠室に向かう先生の背中を、目を細めて見送った。

「まっててくださいね。ふたりでイイコト、しましょうね」と、心の中でつぶやきながら。

『仮眠室でのセックスは厳禁です』と、折に触れいろんな人から言われるのと、イルカ先生の激しい抵抗のおかげで、在位5年にしてあの部屋ではまだ19回しかセックスをしていない。
だから俺にとってあの部屋でのセックスは特別であり、目標でもある。
先生は今日は眠たくてグダグダで、たいした抵抗もできないだろうから、今日こそは記念すべき20回目を迎えたい。目指すは、エロフルコース。

あー。たまんない。考えただけでイキそう。
さっさと仕事を仕上げてしまおう。

今まで生きてきた中で一番猛烈に頑張って、仕事を終らせ仮眠室に向かう。本当はすぐに行きたかったけど、我慢した。
だって先生は「カカシさん、仕事がっ」なんて言うに決まってるんだから。

さて、先生は仮眠室の畳の上に大の字に寝転がってぐーすか平和なイビキをかいている。
ときおり、むにゃむにゃと唇を動かすのがたまらなく愛らしい。

「んー。かわいい! 無防備な姿をさらしちゃって」

どこから責めようか、ドキドキする。
胸をはだけて乳首に吸いつくのもいいけれど、やっぱり早くひとつになりたい。

俺は先生をひっくりかえすべく、背中と畳の間に両手を差し込んだ。

「ん?」

ひっくり返らない。
おかしい。もう一度だ。よっこらしょ。

「んん!?」

やっぱりおかしい。
注意深く先生の躰を見つめると、細い細いチャクラの糸があちこちに絡み合っていた。

「……そんなっ!」

あろうことか、先生はチャクラの糸で服と体を縛り付け、ご丁寧に畳と服を縫い付けていたのだ……!! 力づくでとるのは簡単だけど、そうすると先生の身体が傷つくような仕掛けもあって。

全く、優秀にもほどがあります!!

でも、ヒドイ。先生は本当にひどい。
こうなったら、先生の良心に訴えて、絶対にエッチに持ち込んでみせるから……!

「せんせ、起きてよ……」

俺は先生の横に寝そべって、耳元に擦れた吐息まじりの声を送り込んだ。
先生の大好きな声。ベッドの外で使うと「やめてください、変な気分になります」って怒られてしまう、そんな声。

「イルカ? 俺もう我慢できないんだけど……」

すぴー すぴー。

………。うん。無反応。
相変わらず部屋にはイルカ先生のイビキが響いている。

すぴー。すぴー。

なんだかだんだん腹が立ってきた!
残念ながら俺はそんなに気が長いほうではない。ことイルカ先生のことに関しては。

「イルカせんせーーーーっ! 起きてくださーい!!」

名前を大声で呼んで揺さぶる。

……。無反応。これ、忍びとしてどうなのよ?

「いーるーかーせんせーっ!? Hの時間ですよーっ」

やっぱり起きない。何やっても起きない。イルカ先生の仕掛けのせいでセクハラも出来ない。
ヒドイ!ひどすぎるっ……!! 

イルカ先生なんて、もう大嫌いですっ!!!!

*  *  *


「え? せんぱ……いや、火影様が朝礼に来ないって?」

火影付の暗部たちが困り顔でテンゾウの元にやってきた。

「昨夜から、火影室に籠られたままでして」
「そんなの、部屋に入って連れてくればいいだろう?」
「そ、そんな恐ろしいこと我々にはできませんッ。 もしイルカ先生との濃密タイムの最中だったら殺されてしまいます! 隊長、お願いしますよぉ〜」

いくらなんでも殺すわけがない。とは思うが、あの人なら半殺しくらいはやりかねない。と、テンゾウは大きな溜息をついた。

「はぁ〜……いつまでボクは先輩のお守りをしなきゃ、いけないのかなぁ」
「じ、じゃぁ!」
「いいよ。行って火影様を連れだしてあげるけど、お前たちもついてくるんだよ?」
「は、はいっ!!」

さて。こちらは火影室の前。
重厚な扉をテンゾウの拳がノックする。

反応は、ない。
だったら、とばかりに続く大声。

「火影様!! 朝礼の時間とっくにすぎてますよ! 早く出てらっしゃい!!」
「ひぃえええ!!」

慌てる暗部をよそに、テンゾウは「返事がないなら入りますよ」とドアを開け中に入った。

ぐるり、と室内を見回す。
誰もいない。

「仮眠室か。いくぞ」
「い、いえ、ここから先は隊長だけでお願いします!!」
「何を言ってるんだ。行くぞ!」

少し殺気を孕ませてにらんでやると、暗部たちが恐る恐る一歩を踏み出した。

ガチャリ!
ドアの奥の光景は……。

畳の上で、上向きに大の字に寝ころんだイルカの上に、同じく大の字でうつ伏せのカカシが眠りこけていた。
すぴーすぴーと、二人分の穏やかな寝息が室内に響き渡っている。

もしも、イルカの上に寝ているのが幼子だったなら、それはとても微笑ましい光景だっただろう。だけど、実際寝ているのは、40歳をとうの昔に超えた里の最高権力者、六代目火影 はたけカカシ。

すぴー すぴー
ぐごぉー ぐごぉー

しん、と静まった室内に平和な寝息、二人分。

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

言葉もなく、呆然と立ち尽くす暗部たちは「裸じゃないだけ、ありがたいと思うように」というテンゾウの言葉で我に返ったという。

その後テンゾウに起こされた火影とその妻は、痴話喧嘩をはじめましたとさ。

「カカシさんっ! なんで俺の上で寝てるんですかっ! 早く降りてください!」
「嫌ですっ! イルカ先生、逆ギレとはいい根性してますね! 昨夜はあんな卑怯な手をつかって俺のことを拒絶したくせに!」
「やっぱり、俺のこと襲おうとしたんですね! ここでセックスは厳禁だってあれほどみんなに言われているでしょうがっ」
「そんなこといったって、もよおしちゃったもんは仕方ないでしょう!? 俺のせいじゃありません。生理現象です! どうしようもありませんっ!!」
「ひらきなおるなぁあああ!!!!!!」

テンゾウの雷が落ちるのは、もう少し後。
木の葉の里は今日も平和なようです。(たぶん、ね?)


おしまい (2016.10.30)

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