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   大魔神の壺  <4>

 涼やかな風がイルカの頬を撫でた。

 ピクリと瞼が動いたのを見て、カカシが静かに呼びかける。

「イルカ」

カカシの声にガバリと跳ね起きたイルカは、素早く四方に視線を投げてサクモらの姿を探した。

しかし、彼はは居なかった。確かにあったはずの豪華な膳も、酒の空き瓶も、消え失せていた。笑い声も、話し声も、無くなってしまった。
 奇跡を起こした大魔神の壺は、チャクラを喪失した状態で床の間に鎮座していた。

静寂。

ただし、ナルトの平和なイビキを除けば。

「いない……」
「うん。みんな消えちゃったね」

窓から差し込む朝陽がカカシの頬を赤く染めていることに気付いたイルカは、時計に目を走らせ、驚いた。壺を完成させてから数十分しか経っていない。
彼等とあんなにも沢山の話をしたのに、たらふく食べて、呑んで、長い時間を共に過ごしたはずなのに。

イルカは肩の力が抜けるのを感じた。



「カカシさん」

イルカは神妙な面持ちでカカシに語り掛けた。

「俺たちは、同じことを経験したと思いますか?」
「さあ、どうだろうね」

カカシは大きく息を吸ってから立ち上がり、イルカの側を離れて床の間に向かう。

「でもとっても楽しくて幸せだった。イルカは?」
「俺もです」
「そっか」

 カカシは幼子のように屈託のない笑顔を見せた。


 大魔神の壺が起こした奇跡は、結局何だったのだろう、とイルカは思う。

壺に残ったチャクラがカカシの望みに反応して見せた幻術の類であったのか、それとも本当に冥府から彼らが訪ねて来ていたのか、真実はわからない。
けれどきっと、謎は謎のままのほうがよいのだと思う。

大切なのは、愛した人と己との間に真実の絆があったことであり、生死を超えてそれに気づけたこと。

「父さん、いいもの残してくれたなぁ」

 カカシは大魔神の壺を愛おし気に手に取った。

 愛嬌のある顔をしみじみと眺める。
それから、かつての父母のようにチャクラを込めて壺を撫ではじめた。

「大魔神さま、大魔神さま。どうかこの幸せをお守りください。里の平和をお守りください。それから、この先ずっとイルカと居れますように」




  


長いくせに、あんまり大きな動きもないお話を最後まで読んでくださって本当にありがとうございますー。楽しんでもらえてたら嬉しいのだけどもー。いつもPCで書いていたのに、今回大半スマホで書いたから時間かかったし、めんどくさくて死にそうになりました。ほんまに!

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